HUMAN
人間が担当したこと
- 作品テーマと各話の着地点を決める
- 後続話を壊さない修正範囲を指定する
- AI案を採用・却下・部分採用する
- 「好みの別案」と「修正必須」を区別する
- 必要なら以前の版へ戻す
- 最終的に制作を終了する判断を行う
PRODUCTION CASE STUDY / AI小説の制作工程・開発者ノート
執筆・制作:tatsutatsu-A
『朽木ヶ丘大学で怪異と生きる』は、AIを初稿生成だけに使った作品ではありません。 人間が方針を決め、AIが提案・執筆・点検し、人間が採用・却下・再指示する。 その往復を本文、Web、ビジュアル、音楽まで広げて完成させた、全36話の制作プロジェクトです。
本ページは「AIがすべて自動で作った」という紹介ではなく、実制作で何が機能し、何が難しかったかを記録する技術記事です。
PROJECT SNAPSHOT
CORE PRINCIPLE
AIの役割は「最終決定者」ではなく、執筆・編集・レビュー・実装を高速に往復する制作環境。作品の方向を決めること、何を残すかを選ぶこと、そして最後に修正を止めることは人間側の仕事としました。
THE WORK / 作品について
現代日本の大学を舞台にした、怪異・ホラー・恋愛・コメディを含む全36話の物語です。完成稿は実ファイルの文字列カウントで557,318文字。
全体を通して扱うのは、記憶、夢、他者からの認識、自分が自分であること、人間を「役割」や「器」として扱うことへの拒否、そして明日も生きること。怪異の仕組みと人物関係の両方に、同じテーマが繰り返し形を変えて現れます。
PRODUCTION FLOW / 制作フロー
AIに文章を出させるだけなら一方向です。この制作では、判断を人間側へ戻すループを明示的に作りました。
HUMAN
AI
AI-ASSISTED WRITING / 本文制作
長編では「一箇所だけ良くする」修正が、後の話の整合を壊すことがあります。そのため修正単位と横断チェックを分けました。
初稿を作り、場面の目的・怪異ギミック・人物の役割を固める。
1話ずつ、場面を壊さない範囲で会話、恐怖、説明量、テンポを調整。
時系列、伏線、人物設定、能力、既出説明、前後話の因果を横断確認。
今回の改善で、以前に直した問題や後続話が再び壊れていないかを確認。
過去の点数や「前より良い」を捨て、その版だけを最初から評価。
改善案探しを停止し、完成を妨げる問題だけを検査して終了判定。
QUALITY CONTROL / ゼロベース採点
修正履歴を知ったまま評価すると、努力量や改善幅に引っ張られて点数が上がりやすくなります。そこで過去の採点を参照せず、その版だけを全話読み直す評価を繰り返しました。
FINAL COMPLETION GATE
文章は、探せば永遠に別案を作れます。「修正できる場所がある=未完成」にすると、AI制作は終わりません。そこで最終段階だけは、改善提案そのものを禁止しました。
CHECK ONLY
この判定をもって本文制作を終了。
Stop rule: 「もっと良くできるか」ではなく、「完成を妨げる問題が残っているか」で終わりを決める。
VISUAL PRODUCTION / ビジュアル制作
主要人物の正面立ち絵、能力使用時のポーズ、背景画像までAIを活用して制作。服装・能力・身長差・背景透過などを個別に調整し、作品本文と同じ世界観へ揃えました。
正面立ち絵を基準に、主要5人は身長差も意識して表示。透羽・千燈・小毬・依澄は、能力や個性が伝わるポーズ画像も別に制作しています。
大学廊下、階段、研究会室、神社跡、図書館地下、地下水路、教室、学食、ファミリーレストラン、祭りなどを制作。最終的には、必要な解像度を確保するため1背景ずつ元解像度で生成しています。
MAIN CAST / RELATIVE HEIGHT
POSE STUDY / ABILITY VISUAL




SUPPORTING CAST



WEB / AUDIO / DATA
公式サイトもAIを使いながらHTML / CSS / JavaScriptで制作。本文データ、表示情報、読み上げ辞書を分離し、静的サイトとしてCloudflare Pagesへ配置できる構成にしています。
READ ALOUD
BGM
DATA MODEL
episodes.json に話数・章・タイトル・本文ファイルを持たせ、本文TXTから表示管理を切り離しています。
PRONUNCIATION
speech_dictionary.json は92エントリ。人物名、地名、術式名などを、画面表示を変えず読み上げ時だけ変換します。
episodes.json
{
"id": "ep19",
"chapter": "第二章",
"title": "第十九話_大学の怪異が、みんな同じ方角を向いている",
"file": "19_第十九話_大学の怪異が、みんな同じ方角を向いている.txt"
}
speech_dictionary.json
{
"text": "朽木ヶ丘大学",
"reading": "くちきがおかだいがく",
"type": "地名・施設"
}
WHAT DID NOT WORK / AI制作の難所
長期プロジェクトで目立ったのは、生成能力そのものより、整合・評価・停止条件の難しさでした。
ZIP-BASED VERSIONING / 版管理
小説本文、JSON、辞書、HTMLなどをZIP単位でまとめ、最新版をAIへ渡し、確認・編集後に新しいZIPを受け取る運用を続けました。
Gitそのものではなく、ブランチ・コミット・自動差分の機能もありません。ただし「正本を固定し、変更後の版を別に残し、巻き戻せる」という最低限の安全網として機能しました。
TAKEAWAY / 制作から得たこと
AIは、初稿、編集、レビュー、コード、画像、音楽を一本の制作工程につなげる力があります。一方で、長編になるほど「何を変えないか」「どこで止めるか」「どの版を正とするか」が品質を左右します。
この作品でAIに任せたのは作業の速度と検討量。人間側に残したのは、テーマ、好み、優先順位、採否、そして完成の判断です。その分担が、約55万字の本文と周辺制作を最後まで一つの作品としてまとめるための中心になりました。